細菌とウイルス

細菌とは

 目で見ることはできない小さな生物です。一つの細胞しかないので単細胞生物と呼ばれます。細菌は栄養源さえあれば自分と同じ細菌を複製して増えていくことができます。人の体に侵入して病気を起こす有害な細菌もいます。一方で人の生活に有用な細菌も存在します(納豆菌など)。人の体には多くの種類の細菌がいて、皮膚の表面や腸の中の環境を保っています。

 ヒトに病気を起こすことがある細菌として、大腸菌、黄色ブドウ球菌、結核菌などが知られています。

 抗菌薬(抗生剤、抗生物質)は細菌を退治するための薬です。

 抗菌薬が効かないもしくは効きにくくなった細菌のことを薬剤耐性菌といいます。これまでなら効くはずの抗菌薬が効かなくなると、感染症の治療が難しくなるだけでなく、手術の時や抗がん剤治療で免疫が低下したときの感染予防など、さまざまな医療が困難になります。

ウイルスとは

 細菌の50分の1程度の大きさで、とても小さく、自分で細胞を持ちません。ウイルスには細胞がないので、他の細胞に入り込んで生きていきます。ヒトの体にウイルスが侵入すると、ヒトの細胞の中に入って自分のコピーを作らせ、細胞が破裂してたくさんのウイルスが飛び出し、ほかの細胞に入りこみます。このようにして、ウイルスは増殖していきます。

 ヒトに病気を起こすことがあるウイルスとして、インフルエンザウイルス、ノロウイルスなどが知られています。風邪(普通感冒)はさまざまなウイルスが原因となります。

ウイルスは大きさや仕組みが細菌と異なるので抗菌薬(抗生剤、抗生物質)は効きません。抗ウイルス薬はまだ少数しか開発されていません。

抗菌薬とは

抗菌薬とは細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことを指します。その中でも微生物が作った化学物質を抗生物質、抗生剤ということもありますが、このブログではすべてまとめて抗菌薬と呼んでいます。

 抗菌薬は細菌の構造や増えていく仕組みのどこかを邪魔して効果を発揮します。たとえば、代表的な抗菌薬であるペニシリンは細菌の細胞壁の合成を邪魔します。ヒトと細菌の大きな違いに細胞壁があるかどうか、ということが挙げられます。ヒトの細胞には細胞壁がありません。そのため、ペニシリンはヒトの細胞に影響を与えず、細菌のみを攻撃することができるのです。

このように抗菌薬は細菌の仕組みを利用した薬ですので、細菌以外の病原体(ウイルスや真菌など)が原因となる感染症には効果を期待できません

 抗菌薬は他の薬と同様に副作用が出る場合があります。特に多いのは下痢です。これは病原体だけではなく、腸内の環境を保っている細菌も抗菌薬が攻撃してしまうためです。もし、副作用で飲み続けることをためらうことがあれば、無理せず医師や薬剤師に相談することをお勧めします。

抗菌薬にもさまざまな種類があります。どこにおきた感染症なのか、どの菌によるものなのかなどから最適な抗菌薬を判断して処方されます。1日1回の薬もあれば、1日3回の薬もあります。それぞれ薬によって服用方法が異なりますので、医師や薬剤師の説明をきちんと聞き、正しく服用しましょう。症状がよくなったからといって途中でやめてしまうと感染症がきちんと治らない恐れがあります。また、残った薬を取っておいて後から飲むのは、病気に合わなければ効かないだけでなく、思わぬ副作用が出てしまう可能性もありますので、絶対にしないでください。もしかつて取っておいた抗菌薬が手元にあるようなら、薬局に相談して適切に処分しましょう

治療について

細菌による感染症には抗菌薬(抗生物質、抗生剤)を用いて治療します。もちろん医師が不必要と考えたら用いられないこともあります。通常の風邪はウイルスが原因ですので抗菌薬は効きません

 細菌による感染症といってもさまざまな種類があります。感染症がおきた場所が肺であれば肺炎、膀胱なら膀胱炎という具合です。感染症の種類によって原因となりやすい菌は異なります。一般に肺炎なら肺炎球菌という菌が原因となることが最も多く、膀胱炎であれば大腸菌が原因となることが多いです。体のどこに問題がおきているのか、原因になっている菌は何かを考えて治療方針を立てるのが医師の役割です。そのために詳しく症状を聞いたり検査を行ったりするのです。さらに、もともとの体の状態によってどのような菌が悪さをするかが異なってきます。体が極端に弱っている状態では、日頃は悪さをしない細菌が問題をおこし感染症の原因となってしまうこともあります(日和見感染)。

 なぜ感染症のおきている場所や原因の菌が大切かというと、それによって治療の方針が変わるからです。どの菌に効くかは抗菌薬によって異なります。抗菌薬を内服する量や期間も、感染症の場所と原因菌の組み合わせで変わってくるのです

細菌による感染症と診断されて抗菌薬を処方されたときには正しく服用し、決められた量と回数を決められた日数で飲みきりましょう。症状がよくなったからといって途中でやめてしまうと、感染症が治りきらず、治るまでに余計に時間がかかってしまうこともあります。